高田展久/ヌーヴェル ヴァーグ

たかたのぶひさ/ヌーヴェル ヴァーグ オーナーシェフ。1973年生まれ。一般社団法人 全日本・食学会会員、ローズダイニングクラブ所属。「備後フィッシュガイドブック」監修。

変わり続けるフランス料理店。

 2017年8月、広大附属福山の向かいにあった店舗から、福山市入船町に移転したフランス料理店「ヌーヴェル ヴァーグ」。できたばかりの新店舗を訪ねると、オーナーの高田展久さんが「あれ、取材は今日だっけ?」と、おどけて迎えてくれた。

 シックな赤色の内装で、格式高く、厳かな雰囲気から、ガラリと変わった新店舗。木の色やレンガ、イエローグリーンのチェア、ナチュラルな色味がベースの店内は、温かみがあり窓辺から気持ちの良い陽が差し込む。以前の店舗は、6年前のオープン当初こそ福山では珍しかったが、ここ数年、同じような内装の店舗が増えてきたと感じていた。
「最近似たようなお店が増えてきたね~」と高田さん。内装の壁のレンガ貼りも塗りも自ら行い、店内には高田さんお手製のテーブルが並ぶ新店舗について、「明かりがいっぱい入って、家具は手作り。前の店舗と真逆にしたかった。塗り壁はケーキのクリーム、レンガ貼りはエクレア。どっちも料理の応用」と笑って教えてくれた。
 今まで使っていた機材や食器、カトラリーは、すべて前の店に置いてきた。新店舗は、まったくの一からオープンさせたかったのがその理由だ。以前はコース料理がメインだったが、新店舗ではコース料理は予約のみとし、その時々の野菜や魚、旬な食材など存分に楽しんでもらえるよう、単品メニューで金額も気軽に頼める価格帯のものを中心に揃えた。
 高田さんは今、もっと多くの人に、もっとフランス料理を楽しんでもらいたいと考えている。

子供に教える「味覚の1週間」
 最近では、食育活動にも力を入れる。食の本場フランスでは、プロの料理人が小さい子に食文化や味覚を教えるボランティア活動をやっている。「なにが甘味で、なにがうま味か」などを教える「味覚の1週間」は、フランスでは毎年10月に1週間に渡って行われるイベントだ。日本では2010年に始まり、同じく10月に行われている。高田さんは日本で2013年からボランティア登録をし、挙手をしてくれた小学校へ授業に行く。
 授業ではまず、味覚から思いつくものを聞いていく。「甘味は?」「苦味は?」「どんなものがある?」。どんな回答でも否定はしない。一方で、最近の子供は、味覚が衰えてきていると感じている。「親と食事する機会が減ったり、ながら食べが増えたり。味覚を集中させて、これがどういう味なんだというのを考えて食べることがなくなってきた」と高田さん。
「日本人は世界トップクラスのうま味の感性を持っているはず。普段から口にする、昆布やきのこ、鰹節、普通に食べるものがうま味のかたまり。うま味を感じながら食べてほしい」と続ける。
 調理の授業では、自分では味見をすることはなく、味は必ず子供たちに決めさせる。自分が味を決めたら、それ以外の味が不正解になるからだ。まずかったら自分たちのせい、おいしくても自分たちのおかげ。みんなで味を決めることで、コミュニケーションを取り、団結力やみんなで作ることの楽しさ、決断力を養う狙いもある。

オファーは基本的に断らない
 1973年生まれ。22歳で福山へ帰ってきて約22年間。飲食業界を中心に、福山を見てきた。企業や地域からオファーがあればイベントや料理教室を開催する。オファーは基本的に断らず、月に1回はこうした取り組みに出かけ、さまざまな場所に活動の場を広げている。
 「『あれを始めたのはヌーヴェルだよね』『あれをやったのは高田さんだよね』っていう何かを残したい。楽しいこと、『おもしろいじゃん!』って思えることをやりたいよね。大人が楽しんで、子供が『大人って馬鹿だなー』って思うような、そういう楽しそうな空気は伝わるはず。そのワクワクを感じた子供が大人になれば、仕事に就いたときにワクワクするモノづくりができるかもしれない。そうなったら、おもしろい街になっていくんじゃないかな」(文=山﨑小由美)

ヌーヴェル ヴァーグ
2011年4月開店。瀬戸内海をイメージした料理や新鮮な野菜を丸ごと使って畑をイメージしたアート作品のようなフレンチ、素材の味が凝縮されたジェラート等が気軽に楽しめる。
住所:広島県福山市入船町1-4-10(Cotton 跡)
TEL:084-926-7707
営業時間:Lunch 11:30~15:00、Dinner 18:00~22:00頃
定休日:水曜日
http://restaurant-nouvelle-vague.com

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