僕らの価値観。

瀬戸内で働き、暮らす4人の20代が集まり「地方と都会が良い関係を築いていくには」というテーマで話しました。それぞれ、どんな仕事をし、どんな毎日を過ごしているか。地方と都会の垣根を超えて存在する、20代の価値観に触れてみました。

倉田敏宏
くらたとしひろ/ 1994 年福山市生まれ。tachimachi 代表取締役。東京のベンチャー企業で働いた後、福山に戻って起業。「暮らしの余白を彩る」を理念に飲食店経営や企画、写真撮影などを福山と東京の2 拠点で行う。現在、東京から福山へ訪れるきっかけづくりの企画を進めている。

戸塚佑太
とつかゆうた/ 1993 年岡山県生まれ。ウガンダでのコーヒーとの出会いをきっかけにコーヒースタンド「Colored Life Coff ee」を始める。現在はコーヒーブランド「MATERIA」の立ち上げ準備をしながら、Web や製品のデザインも行う。

島田舜介
しまだしゅんすけ/ 1994 年兵庫県生まれ。EVERY DENIM 共同代表。2015 年兄弟で瀬戸内発デニムブランド「EVERY DENIM」立ち上げ。キャンピングカー「えぶり号」で全国を巡り移動販売。「Forbes 誌が選ぶアジアの30 歳以下の30 人」選出。テレビ東京「ガイアの夜明け」出演。

鷲野太平
わしのたいへい/ 1993 年愛知県生まれ。2012 年福山市立大学入学時に福山市に移住。在学中に福山市中心部のアパートから鞆の浦にある一軒家へ移り住んだことから、鞆の浦の空き家の有効活用や地域の魅力発信のための活動を行う。趣味は空き家掃除。

倉田:ここにいるのはみんな、地方にも都会にも暮らした経験がある4人。僕は福山で生まれ育って、東京に1年間住んでいました。島田くんは岡山と東京で暮らし、戸塚くんは岡山出身で東京在住。鷲野くんはもともと愛知県に住んでいて、今は鞆の浦に住んでいます。今日は、地方と都会、両方の良いところも悪いところも知っている4人で「地方と都会が良い関係を築いていくには」というテーマで話してみたいと思います。
島田:僕が東京にいたときに感じたのは、人が多くて騒がしいこと。人が多すぎるからか、他人に対して無関心といった印象です。今はもう、用事があれば行けばいいというスタンスで、東京に住む必要はあまりないと思っています。
倉田:僕はデザインや企画といった仕事に関しては、東京の方が技術やスキルを持ったクリエイターも多く、最先端だと思っていて。そういったスキルや情報を手にするには、東京に滞在する時間を増やして、東京で吸収したことを地元で使えたらいいと思っています。島田くんは違いますか?
島田:確かに。Webデザインや写真撮影などのスキルを持ったクリエイターは東京の方が多いですね。でも、僕は1人ですべての仕事をする必要はないと思っています。自分ができない仕事は、できる人にまかせればいいんですよね。岡山にいても、東京だけではなくて、全国のクリエイターともスカイプで話して一緒に仕事ができますから。

地方と東京で違う「生きている感覚」

倉田:東京を拠点に、デザイナーやエンジニアとして活動している戸塚くんは、地方と東京の違いを感じていたりしますか?
戸塚:人口が多い少ないという違いはありますね。人が多い場所には、お金や知識が集まる。僕は東京でIT関連の会社を始めたけど、岡山では十分に大きな市場がなく、実現できない領域だと思います。人が多くないと、成り立たない仕事はありますね。でも最近は、東京以外の場所に住みたいです。人が少ないからこそのメリットもあると思っています。
倉田:例えば?
戸塚:東京では、毎日のようにセミナーやイベントが開催されていて、逆に、地方にいるとそういった機会があまりないので、自分が本当にやりたいことに時間も労力も集中できるのが魅力です。
島田:確かに。東京にいる時は作業できる時間がすごく短かったです。人に会うことが多くて、落ち着いて仕事ができませんでした。
倉田:戸塚くんの話を聞いて思ったのは、新しいモノを作ったり、自分がやりたいことをじっくり考えたりすることに関しては、地方のほうが環境的に適しているということだよね。
戸塚:そう。だから最近、僕は地方に魅力を感じています。
倉田:鷲野くんはどうですか。大学生のときに、愛知県から鞆の浦に移住したということだけど、実際に住んでみると?
鷲野:住んでみて感じたのは、家に帰るまでに話しかけてくれる近所の方々が多くて、名古屋にいたときよりも、人と触れ合う頻度が多くて濃度も濃いと思いました。それが、生活する上での安心感にもなっています。
倉田:僕も近所にどんな人が住んでいるかわかるだけで安心するので、共感できます。鞆の浦に住むことで、学びや発見はありますか?
鷲野:テクノロジーに触れるとか、最先端なことは都会に比べて少ないですね。でも、地方でしか学べない技術や文化もあると思っています。例えば、船を岸に停泊させるためのロープの使い方。こうした知恵が残っているのが、地方の強みだと思います。
倉田:島田くんに聞いてみたいんだけど、地方と都会を行き来するなかでギャップを感じることは?
島田:ひとつは「生きている感覚」ですね。インターネットで注文すれば、翌日に欲しいモノが届く時代に、自分で野菜やモノ作りをしていると「生きている」と感じることがあります。都会はなんでも便利だから、自分の手からモノゴトが離れすぎていて、生かされてしまっているようなイメージがなんとなくある。生きているという感覚があるほうが、豊かだと感じます。
戸塚:東京だと暮らしを助けてくれる便利な機能がたくさんあるので、自分でやらなくても生きていける。逆に言うとそういう便利な機能がないと、生きていけないとも言えます。
倉田:そういうサービスがなくなっても生きていけるように、何かしていますか?
戸塚:僕は、都会的な生活じゃないところに楽しさの意識を向けるようにしています。都会的な生活は、より多くの他人に評価されることを豊かさとして、それを追い求めているような生き方だなと感じます。

豊かさとは何か?

倉田:最近、SNSやメディアで「持たないことがかっこいい」という「ミニマリスト」を目にするようになりました。無駄な情報やモノがないミニマリストは、豊かと言えると思いますか?
鷲野:僕は、真逆の方向に進んでいますね。鞆の浦で空き家の清掃を手伝っていると、大家さんから使ってないテーブルをもらって、自宅に持って帰ったりしているので、モノが増えています。基本は自分で直して、修理が難しい場合は手仕事が上手な地域の人に助けてもらっています。
倉田:テーブルをもらえるって単純にいいですね。戸塚くんは?
戸塚:僕は持たないようにしていたのですが、最近は持つことを大切にするようになりました。持たないこと自体が豊かさではなくて、持つモノをきちんと選び取ることが豊かさだと思います。情報が多い都会では、便利さなどの客観的な判断基準でモノを買ってしまったりするけど、自分の感覚と共鳴したモノだけを選び取れるようになりたいなと思っています。
島田:モノを持たないことがかっこいいという価値観は、スティーブ・ジョブズが毎日同じ服を着ていたみたいなこととも関係あるんですかね。毎日選択する手間を減らして、無駄な時間を費やさないという。
倉田:確かに、そんなタイトルの本も出版されてました。
島田:戸塚くんも言うように、日本のミニマリストの取り入れ方ってすごく中途半端だと思っていて。ヨーロッパ的思想の「モノを少数精鋭にして、自分で選んで持つ」みたいに振り切っていません。単に毎日の手間を減らしたいという考え方も、中途半端だと感じています。
戸塚:身の回りのモノを選ぶとき、ちゃんと自分で一度立ち止まって考えたいですね。みんながこっちがいいと言ってるとか、みんなが選んでいるから選ぶという文化が強すぎるよね。
島田:例えばよくわからない英字が入っているシャツとか、服を自分で選んでいないことに対して、あまりリスペクトできないというか。服って、衣食住という暮らしの大切な要素のひとつなわけで、そこは大切にしてもらいたいと思います。

現場に行き、背景を伝える

倉田:モノを選ぶには、選び取る感覚を研ぎ澄ませないと難しいと思うんだけど、僕たちはどうやってその感覚を研ぎ澄ませればいいんだろう。そういう視点から、モノを作っている人たちが伝えていかないといけないことはあるかな?
島田:モノがどう作られているかを知ることで、選び取る感覚が研ぎ澄まされるのはあると思う。モノの作り方を知っている人と出会う機会は、圧倒的に地方のほうが多いですね。モノの作り方は知らなくても生きていけるから、知る必要はないとも言えるけど、知っておいたほうがいいと思います。なぜいいかは、自分でもいまいちわからないんですが。
戸塚:今は、ブランドや看板によってモノが消費されている時代だから、生産背景を知る必要もないし、本来の価値を考えることもあまりないように思います。
島田:でも、文字で「どこどこで作っています」という情報を出しても、それだけではワクワクしません。だからこそ、実際にモノを作っている人と出会って、生産している現場を伝えることが重要です。
鷲野:僕は、モノ作りをしている人やモノ作りに関わる人に会うと、「この人おもしろいな。きっといいモノなんだろうな」と考えます。どんな人がどうやって作っているかという情報は、買う側にはすごく大切かもしれません。
島田:生産者の熱量を、まず自分の身近な人たちにアツアツの状態で伝播させることが大切だと思います。そうすると、買ってくれた人の周りにも少しずつ広がっていく感覚があります。
戸塚:僕は波紋という表現を使いたいですね。作る人が中心にいて、その人から波紋みたいにモノの価値が伝わって行くイメージ。作っている人の熱量を帯びたまま伝えられるように、頑張っていきたいと思います。
鷲野:その伝わり方は、自分が住んでいる街に別の地域に住む人を呼び込むのと似ている気がします。旅行代理店が「田舎のんびり体験ツアー」を組んでも、本質的な良さは伝わらない。本当に田舎暮らしに興味がある人は、その場所に暮らす人と出会うことが最も魅力を感じられる近道だと思います。
倉田:伝えたいことを、熱量を保ったまま伝える。地方、東京という場所を超えて思いを伝えることが、僕たちの世代に必要なことだと思います。

僕たちは、何に挑戦していくか

倉田:最後に、20代半ばになった僕たちがこれから何をして、何に挑戦していくかを話したいと思います。
戸塚:僕は時代を超えて本質的に素敵だなって感じてもらえて、もっと原理的に人の役に立つモノを作りたいと思っています。そのために現在は「人の感情に寄り添うコーヒーブランド」を作っています。生活のシーンをピックアップしてそのシーンに寄り添うために作る、がコンセプト。じっくり時間をかけて、僕がこの世からいなくなるまで、そういうものを作り続けていきたいと思っています。
島田:僕は、改めて表面だけを見ないようにしていきたいなと思います。モノ作りの工場を救う取り組みをしているアパレルブランドは東京にもたくさんあるんですが、現場を理解しているブランドは少なくて。僕たちは現場を大切にしたいですね。そのために、瀬戸内にあるデニム工場に消費者と行く工場見学ツアーを開催しています。僕が話すより、現場を見てもらったほうが伝わることが多い。そういった取り組みを通じて、デニム工場や僕たちのブランドに関わってくれる人たちを大切にしていけたらと思います。
鷲野:今日の座談会を通じて、島田くんや戸塚くんと知り合えて、新しい仲間ができたのがうれしいですね。今は、鞆の浦の空き家を清掃する活動をしていますが、今後は空き家を活用して、同世代の仲間たちが集まって楽しめるような場所を作っていきたいと思います。そういう拠点があることで、鞆の浦や福山のことを知ってもらって、好きになってもらえたらと思っています。
倉田:ここにいる4人は仕事はバラバラだけど、いいモノやいい場所を作っていきたいという共通した志を持っています。これから、お互いの展開を楽しみに、もっと関わっていけたら。それぞれが違うからこそ、一緒に何かできたらおもしろい気がしています。(文=倉田敏宏)

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