岡信太郎/柑橘行商人

おかしんたろう/ぽんぽこらんどスタッフ。長崎県出身。1989年生まれ。2015年愛媛県にある離島、岩城島に移住。岩城島で育てた柑橘類を日本全国に届けながら、全国から人が集まる「しまパー」を企画。

「好き」を仕事にしていい。

 瀬戸内海に浮かぶ信号のない小さな島、岩城島(いわぎじま)。日本各地のマルシェに出店し、この島で栽培したレモンやグリーンライムといった柑橘類を販売をしている小さな会社があります。大阪から移住し、「作る人」と「食べる人」をつなぐ株式会社ぽんぽこらんどで働く、スタッフの岡信太郎さんに聞きました。

 初めて岩城島にやってきたのは19歳の春。当時、知り合いに、ぽんぽこらんどの代表の古崎公一さんを紹介してもらって、遊びにやってきました。 その後、広島にある農機具メーカーに就職しました。仕事を通じて農家さんとやりとりをしているうちに、農業で稼いだお金が農機具の修理代に消えていくという話を聞いているうちに、「これで誰が幸せになっているんだろう」と感じるようになりました。
 その時、ぽんぽこらんどの理念である、「農作物を作る人と食べる人をつなぐ」を思い出し、2015年、26歳で岩城島に移住し、ぽんぽこらんどで働くことにしました。

農家さんのがんばりを伝えるのが好き
 柑橘類は、勝負が1年に一度きり。ハウス栽培の葉物野菜なら、1年に5回ほど収穫できますが、柑橘の収穫は1年に1回のみです。柑橘農家のみなさんは、たった一度の収穫のために1年間全力で取り組んでいます。だからこそ、農家さんの真面目さや誠実さの日々の積み重ねが、ストレートに味に表れます。そんな農家さんの努力をお客さんに伝えて、柑橘類を買ってもらう。そして、買ってくれた人の「おいしかったよ」を農家さんに伝えるのも僕の大切な仕事です。
 僕たちが全国各地のマルシェに出店するのも、そのため。どんな人が作っているかを伝えると、目の前のレモンに対する、お客さんの興味も変わります。過去には、どんな場所で作っているんだろうと、岩城島まで足を運んでくれたお客さんもいました。そういう反応があれば、農家さんも喜んでくれて、今年もまたおいしい柑橘類を育てようとなるんです。
 ぽんぽこらんどの仕事以外にも、岩城島に情報や人が集まってくるように、体験&民泊&島キッチン「しまパー」を企画しています。「しまパー」は農家さんと食べてくれる人が出会い、お互いに刺激を受け続けることができるような、変化が起こる場所を目的に作りました。これまで、僕たちが全国のマルシェで出会ってきたこだわりのある食材やお酒を揃えて、岩城島の住民や来島者と一緒に収穫した柑橘や島の食材を使い、食事会などを実施しています。そこから生まれたアイデアが、新しいサービスや製品につながっています。ぽんぽこらんどは、柑橘を作ってくれる農家さんと食べてくれるお客さんをつなぐためのハブのような機能ですが、「しまパー」は柑橘に限らずさまざまな地域の生産者さんだったり、一流の料理人だったりするプロフェッショナルと出会い、友達になれる場になっています。この場所で出会い、友達になった人同士で、一緒に良い未来を創っていくことができると思い、開催しています。

20年先、未来の同窓会を見据えて
 僕の仕事は、一人ではできません。柑橘を作る農家さんと、買って、食べてくれるお客さんがいて成り立つ仕事。だから、両者が満足してくれなければ仕事になりません。農家さんもお客さんも大切にして、関わってくれるすべての人に、豊かになってほしいと思います。食べてくれるお客さんにとっては、美味しいものを食べることが日常になって、生活の質が良くなっていけばいいですし、農家さんにとっては、よりよいものを作り続ければ、収入が良くなって幸せになってくれたらいいと思っています。これから幸せになっていくお客さんと農家さんの中心に僕がいるのだから、僕自身が幸せですし、だからこそ、いまの仕事が一番好きです。
 20年後にこれまで岩城島と関わってくれた人たちと同窓会をした時に、「20年前、島に移住したばかりのころは稼げてなかったけど、今は子供も大学行って、立派に社会人になって自立したよ」とお世話になったみなさんに伝えられるようになりたいと思います。(文=倉田敏宏)

ぽんぽこらんど
「青いレモンの島」岩城島を拠点に、柑橘類の販売や商品開発を行いながら、生産者と消費者の橋渡しを行う。東京や大阪、京都、北海道など全国のマルシェに積極的に出店。

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