痛快!えみが行く

「もぅ母さん、ヘトヘトです」

2010年に福山市で起きた2件の虐待死事件。すぐ近くの町内にいた小さな命を守れなかったことへの責任を感じて、活動を始めた「mamanohibi」。最近また、子どもの命が途絶えたというニュースを目にして、諦めのような思いが押し寄せてくる。
先日見たニュースでは、子どもの「助けてください」という学校へのSOSの声がかき消され、小学4年生の女の子が親から虐待を受け、命を落とした。厚生労働省によると、児童相談所による児童虐待相談対応件数はこの10年間で3倍に膨れ上がり、2017年度には13万3000件を超えた。児童相談所もパンク状態だ。もっと早く国の予算が付いていれば、児童相談所の現状も違ったのではと思う。私たちに何ができるか? を考えて始めたこの活動は、すぐ近くの町内で息をしていた子ども達の命を守れなかったことへの、社会に属する1人の責任としてのものだった。

しゃべって笑って、心は軽くなる
mamanohibiの活動はもうすぐ10年目に突入するのだけど、当初から続けている「ママ日々ミーティング」というおしゃべり会では、子育て中のママたちの本音が変わらず飛び交う。
子どもの成長にまつわる不安から、旦那さんやお姑さんの不満。ママ友とのこと、学校のこと。毎回おしゃべりは尽きない。私たちは時に真面目に応えるけれど、そのほとんどは笑いに変えるお手伝いをしている。みんなでしゃべってみんなで笑って、ママたちの心は随分軽くなる。
そんな変化を見ているからこそ、国や市の「どうだ! 子育てにいいだろう?」みたいな施作に疑問を覚える。机上の空論ではなく、現場のリアルな声をもっと聞いてほしい。
mamanohibiの活動と並行して、13年ぶりに神戸でラジオDJの仕事に復帰し、現在住んでいる福山と行き来している。番組にも子育てに関する本音がたくさん届く。私は毎日のようにママたちの叫びを聞いている。だから余計に、やるせない気持ちが増す。
「年の近い2人の子ども、ほとんどワンオペ育児状態です」「保育園が希望のところに決まらず、2人が違う園に入ってしまい、朝から保育園をはしごして出勤しています」挙げたらきりがないけど、子育て者の声は行政に届いていないのか。

「イクメン」という言葉が不自然
こうしたストレスが結果、虐待に繋がる可能性だって大いにある。
問題解決は先送りにされたまま、女性ももっと働きましょう! という風潮だけが年々高まっている。保育園に入れたら、ママたちは安心して男の人と同じように働けると思ってるんですか? 朝から2園もはしごして子どもたちを送り、職場に向かうしんどさを考えてみて?
子連れ出勤を国が推奨すると報じたニュースでは、電話を取って仕事をしているお母さんの胸で抱っこ紐の中の赤ちゃんがじっとしていた。「ますます女性の負担が増える」「どれだけのお父さんが会社に子どもを連れていくの?」「子どものより良い保育の環境を考えてないよね」と、うちに来られるママたちからはブーイングの嵐だった。全く同感、職種や職場によっては助かるママもいるかもしれないけれど、行政の考えはどこまでもずれている。
福山市が「子育てパパが早く会社から帰る日」なんていうのを推奨するというニュースも耳にしたけれど、どれだけの人がその恩恵を受けられるのか。シングル世帯はどう思う? 「イクメン」とか「パパの育児参加」という言葉があること自体が、いまどき不自然だ。この現状で、「女性よ社会に出てください」ってよく言えるよなぁと不思議に思う。
この40年間で、専業主婦と共働きの世帯数が逆転して、共働き世帯が専業主婦の2倍になった。でも、男女の年収を比べると、きれいに女性は男性の半分だ。

虐待、少子化、社会進出を総合的に
数年前、私は広島県呉市で起きた虐待死の事件の虐待調査委員を勤めた。有識者が集まって、ひとりの子どもの死を検証していく、今までに経験したことのない辛い作業だった。その時にも感じた、縦割りの行政のスタイル。各担当課が、それぞれの目標を掲げ、それぞれの施作をしている。
ソフト面のサポートとして、もっと考えないといけないのは、「児童虐待」「少子化」「女性の社会進出」を総合的に見ることだと思う。それぞれが連動しているということに、気づいてもらいたい。児童相談所の職員や保育園を増やすことも必要だけど、問題の本質に向き合うことが、最優先。燃やせる山を増やして火が届くのを遅らせるのではなく、元の火を消すことを考えないと。もっと、子育ての内側にある問題にも目を向けてほしい。保育園の振り分けも、公平性やポイント制ではなく、本質に向き合って、既存の制度を変える勇気も本当に子育て支援を考えるには必要ではないか?
このまま「女性も働きましょう!」が進むと、子どもの心が置き去りにされていくようで、心配でしょうがない。行政に対してそんなことを思いながら、私たち自身も、自分にできることを引き続き考えていこうと思う。

時には、自分にもやさしく
とはいえ、こうしている間にも子どもは成長し、私たちは働いてお金を手にして暮らしていかないといけない。子どもの年齢ごとに起きる問題はどんどん変わる。「もう母さん、ヘトヘトです」私自身、そんな弱音も吐きそうになる。でも、働き方改革も、暮らし方改革も、自分の心を守るために自分でやっていかないといけない。

どうぞママたち、時には自分にもやさしくしてあげてくださいね。いつもお話を聞くことしかできない私たちですが、またいつでもmamanohibiにいらしてください。
一連のニュースを見て思うことは、変わらずこんなことです。心は静かな冬のままですが、それでも毎日は続く。今年もはじまりの春がやってきました。

  • 書いた人/井口絵海

1977 年福山生まれ。二児の母。NPO 法人mamanohibi 代表。ラジオDJ(KissFM KOBE)。育児セラピスト。
NPO法人mamanohibi https://www.mamanohibi.com

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